LION TASTING IMPRESSION 乗り味の表現力を愉しむ──
プジョーの“しなやかさ”を解明 vol.1

プジョー車の乗り味を表現する言葉に“しなやかさ”があります。路面からの衝撃をいなしながら、しっかりと路面を掴んで狙い通りのコーナリングができ、軽快なハンドリングと優れた直進安定性を両立している。そんな数値化できない感覚を理解するために、社外のテストドライバーがプジョー車5台を乗り比べながら“しなやかさ”を解明します。3回シリーズの第1回目は、208です。

しなやかな脚、しなやかな乗り心地とは?

クルマ好きが乗り心地について話すとき、プジョー車の“しなやかさ”についての意見が多く集まります。たとえば、コーナリング時の「減速しながらカーブに差し掛かり、さらに深く回り込み、出口へ向かいつつ再加速する」という一連の動き。段差を越えた時の「路面からの瞬間的な入力を受け止め、減衰させる」という動き。あるいは、それらの要素が複合的に起きる時など、日常の運転でのさまざまな場面にプジョー車特有の“しなやかさ”が散見されます。

では、この“しなやかさ”は、どこから生まれるのか?それを解明するために、社外で活躍するプロのテストドライバーが試乗し、物理的な視点で分析しました。

テストフィールドは、都内の一般道と首都高速道路。一般道では取り回しや細かなインターバルで繰り返されるストップ&ゴー、低速域での乗り心地を確認。いっぽう首都高ではたびたび遭遇する目地段差や不整路面、頻繁に現れる左右コーナーと中高速域での乗り心地をチェックしました。サーキットやテストコースとは違い、あくまで日常的なシーンでの試乗。さて、テストドライバーは何を感じ取るでしょうか?

車体設計のトータルバランスでつくる軽快感 ── 208

DRIVER’S COMMENT
「まず感じたのは、コックピットに座った時の気持ちよさです。狭さは感じず心地よいタイトさがあり、質感も高いと思いました。このクラスでは、あまり見ないレベルです。

走り始めて、加速しながらちょっとした段差を乗り越えた瞬間『やるな』と思いました。単にハード/ソフトという評価軸だけでは表せない、柔軟さと軽快さが同居する特異な感触です。

新車開発でクルマを軽快に見せる常套手段に“ゲインを上げる”という手法があります。これはハンドルを切る量に対する車体の応答を速くして、わかりやすく機敏さを演出するセッティングを指します。具体的には、ステアリングをクイックにしたり、サスペンションやシャシーを硬くするなどです。当然そこには失われるものもあり、直進安定性の悪さやゴツゴツした乗り心地といったデメリットがついて回ります。

プジョー208の開発スタッフは、そのような常套手段を選択しなかったのでしょう。サスペンションを絶妙にストロークさせることと、路面からの入力(振動)をミニマムに抑え込ことを同時に行い、かつ軽快感も失わない。そんな相反する事柄を最終的に成功させています。その技術力の高さは唸らざるを得ません。

特にショックアブソーバーの伸び側の減衰設定は、素晴らしいですね。足回りのチューニングだけでは、絶対にこの乗り味はつくれません。街乗りのスピードではわずかにハードに感じるシーンもありましたが、首都高速ではガツンとくる段差や荒れた路面からの入力をいなしつつ、連続するコーナーでは『これは愉しい』と思わせる懐の深さも見せてくれるのです。

クルマの鼻先がインに向かってスッと入っていく手応えも小気味いい。思い描いた走行ラインを右に左にスムーズになぞっていける快感は、スポーツカーのそれと比べても遜色ないと思います。それもこれも、カッチリとしたボディ剛性と路面にぴったりと追従して動くサスペンションの連携といった高度なトータルバランスがなせる技だと思います。ごく一般的なトーションビームというサスペンション形式なのに、その乗り心地は想像をはるかに超えていました」

柔よく剛を制すのプジョーイズム ── 208

新車開発の最前線において、さまざまなドライバビリティ(運転操作に対してエンジンやボディがどのような反応と動きを示すかの運転応答性のこと)を確認するテストドライバー。乗り味をチェックするプロが208の走りに垣間見たのは、プジョーの開発チームの妥協なき姿勢でした。

常套手段に頼らず、ボディ、シャシー、サスペンションのすべてを渾然一体とさせて生み出した“しなやかさ”。それは乗り手が感じるものを丁寧にクルマの動的性能に反映することで生まれているようです。その完成度の高さには「柔よく剛を制す」の表現がぴったり当てはまるのではないでしょうか。

プジョー車に備わる“しなやかさ”へのアプローチ。次回は、パワートレインの異なるe-2008(EV)、3008 HYBRID4(PHEV)、リフター(ディーゼル)のプジョーSUVラインアップ3台の「“しなやかさ”の解明」をお届けします。