LION TASTING IMPRESSION 乗り味の表現力を愉しむ──
プジョーの“しなやかさ”を解明 vol.2

プジョー車の乗り味を表現する言葉に“しなやかさ”があります。路面からの衝撃をいなしながら、しっかりと路面を掴んで狙い通りのコーナリングができ、軽快なハンドリングと優れた直進安定性を両立している。そんな数値化できない感覚を理解するために、社外のテストドライバーがプジョー車5台を乗り比べながら“しなやかさ”を解明します。
第二弾となる今回はパワートレインの異なるe-2008(EV)、3008 HYBRID4(PHEV)、RIFTER(ディーゼルエンジン)のプジョーSUVラインアップ3台を試乗します。

EVの強みを活かした楽しさとクラスを超えた高級感 ── e-2008

DRIVER’S COMMENT
「走り出してわずか数百メートルで、『このクルマはコンパクトカーとは思えませんね!』と感激したのがe-2008です。このe-2008のキャラクターの中で最初に指摘したいのは、EVであればこそ実現可能なシームレスでしなやかな乗り味そのものでしょう。これにはとても驚きました。

青信号と同時にアクセルを踏み込んでいった時のナチュラルな出力特性、混雑した一般道で頻繁に求められる加減速のための微妙なアクセルコントロール、そして料金所を経て首都高速へ合流する際に欲しい絶対的なパワー。それらのどれもが緻密かつ大胆です。e-2008の走り味にはスムーズさと高級感があふれています。

これらは難しいことではありません。クルマに詳しくない人が乗ってもその高級感は、“体感”としてきっと理解できると思います。EV全般が持っているパワートレインのスムーズさという長所に加え、e-2008はそこにプジョーらしい“しなやかさ”と、さらに“しっとり”“どっしり”が加えられた印象なのです。

たとえば首都高速上での目地段差や大きなうねりを通過したときに、“しなやかさ”はより明確になります。高いフラット感をキープしたまま、きわめて軽いフットワークで駆け抜けていく。それらの上質さには理由があります。エンジン搭載車よりも重いというデメリットを重厚感≒安定感というメリットに転化していることや、フロア下にバッテリーを搭載するEVの低重心さを有効活用したセッティングが施されていることなどです。それらがe-2008というクルマのクラスレスな高級感を支えていると言っていいでしょう。

しかしそれ以上に特筆すべきは、プジョーらしい“しなやかさ”が足まわりのチューニングと車体設計のコンビネーションによって完成されていることだと思います。それぞれの長所を高め合いつつ、結果として4つのタイヤの性能をフルに使い切りながら地を這うように走行する。その濃厚なフィーリングがじつに素晴らしいのです。EVであることが最終目的になっていない、EVだからこそ演出できる上質な世界観が実現されています」

逃げない開発思想が生んだ“しなやかさ”とは? ── 3008 HYBRID4

DRIVER’S COMMENT
「『しなやかな足まわりだ』これが第一印象でした。3008 HYBRID4は、SUVというジャンルに属するクルマですが、そのことをいったん忘れてもいいかもしれない……最初にそう感じました。一般的にSUVは最低地上高(路面と車体のいちばん低い部分の間の距離)をかせぐために、ボディの全高も重心も高いのが普通です。ゆえに安定感が失われやすい傾向がありますが、そのデメリットはたいていクルマづくりの場合、サスペンションを硬くすることで解消させます。

しかしプジョーの開発陣はあえてそのようなオーソドックスな解決策をとらなかった。車体設計と足まわりをトータルバランスで煮詰めながら、プジョー流の“しなやかさ”を追求しているのです。

実際には一般道と首都高速の両方に共通するシーンですが、低速域ではゴツゴツしない当たりの良さを確保しつつ、コーナリングでは小さな舵角で狙い通りのラインをトレースできます。大げさなロール(車体が左右にグラっと傾く挙動)はほとんど感じません。“しなやかな足まわり”のセッティングの妙で、何ごともなかったかのように目地段差や凹凸、大小のコーナーをクリアしていきます。

搭載されているハイブリッドユニットは、エンジンと電気モーターの連携が極めてスムーズですね。走行中であればエンジンのオン/オフをほとんど感じません。運転しているのが高機能なハイブリッドSUVであることを思わず忘れてしまいそうなほど、ナチュラルなドライビングフィールでした。そこに『背高だから』『ハイブリッドだから』という気構えは一切不要なのです。

ふつうのSUVであればメリットである走破性やスペース効率と引き換えに、デメリットである車体の不安定さを引き受けなくてはなりません。しかし3008はそのネガを軽くひとまたぎしてしまう。繰り返しますが、この美点は足まわりのチューニングだけでは実現できません。優れたシャシー性能とサスペンションのバランスにおいてはじめて成立する、プジョーらしい“しなやかさ”のための結論なのです」

ドライビングも愉しめる大空間トールボディ ── RIFTER

DRIVER’S COMMENT
「全高185cmのトールサイズが日常やレジャーでの使い勝手の良さを想像させてくれる、試乗4台目のRIFTER(リフター)です。リフターはスペースユーティリティを優先させて設計されている背高ボディ。低重心が確保できない構造なので、さすがにフラットでしなやかな乗り心地を盛り込むことは難しいかもしれない……と事前に案じていました。しかし、驚きました。往路の一般道でその不安はみるみる減り、首都高速に駆け上がって数分でそれはほとんど解消されてしまいました。しっかりとプジョーの走り味になっている──そう強く感じたのです。

まずしっかりとした剛性感のあるシャシーが路面を問わず終始安定しており、サスペンションのパフォーマンスがすべて使い切れているような印象を受けます。たとえば『つなぎ目のある荒れた路面のタイトなS字コーナー』というような、トールワゴンがもっとも苦手とするシチュエーションが首都高速には点在しますが、そんな難所でもリフターは派手にロールすることなく、ミニマムな挙動で淡々とクリアしていく。その滑走するようなフラットライドには感激してしまいました。

少し専門的な話になりますが、サスペンションの(縮み側に対して)伸び側の減衰力のセッティングが素晴らしく適切なので、さまざまな走行状況で内輪がしっかりと路面をつかんで追従していきます。それが結果的に、4つの車輪がしなやかに動いているようなフィーリング……地面を掴む感覚となって現れるのです。もちろんまったくロールしないわけではありません。しかしそのミニマムなロールとて荷重移動のメリハリをつけるためには有効で、そこから生まれる接地感には『これはこれで濃厚でいいな』とさえ思わせてくれる長所があります。巧妙すぎるセッティングの詰めには感心するばかりです。

リフターが与えてくれる安心感、安定感、それでいて失われない気持ちよさ。それらの“味”こそがプジョーの流儀なのかもしれません」

── 最終回はテストライド5台目、プジョーのフラッグシップサルーン508 HYBRIDの“しなやかさ”を解明します。