LION DNA PEUGEOTコンパクトのDNA
「フレンチテック」の愉しみ方[後編]

前編ではプジョーをこよなく愛する新倉俊治さんに、現在の愛車である205 GTIとのなれそめやプジョーのある生活を語っていただきました。今回の後編では自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の代表を務める加藤哲也さんと最新のモデルの208 GTも加わり、プジョーの新旧コンパクトを乗り比べて、その魅力を深堀りしてもらいました。

打てば響くダイレクト感

205は1983年に登場し、日本でも1986年から販売が始まったコンパクトなハッチバック。なかでもスポーツモデルの205 GTIは、スタイリッシュなエクステリアと軽快なハンドリングで、当時のクルマ好きにとっての憧れの一台と高い評価を得てきました。発売当初、最高出力105psの1.6ℓ直列4気筒OHCエンジンを搭載していた205 GTIは、1987年に115psにパワーアップ。1989年には120psの1.9ℓエンジンを採用しました。もうすぐ15万kmに届こうとする新倉さんの205 GTIは、1994年式の後期モデルにあたります。

そして今回連れ出したのは、2019年に登場したプジョーの新世代コンパクトモデル208です。ユーザーのライフスタイルに合わせて“自分らしくさらに運転を愉しむ”ことをコンセプトに、同じ車体でパワートレインが選べる「POWER OF CHOICE」を採用したこのモデルの日本仕様では、最高出力100ps、最大トルク205Nmの1.2ℓ PureTech ガソリンターボエンジンの208と、最高出力136ps、最大トルク260Nmを発生する電動モーターを搭載したe-208の2種類が用意されます。人の身体に合わせて設計された3D i-Cockpitや先進運転支援システムを搭載するなど、多様性に富んだコンセプトや最新技術が凝縮された点が評価され、欧州カー・オブ・ザ・イヤー2020と日本カー・オブ・ザ・イヤー 2020-2021 インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。今回はガソリンエンジン搭載のトップグレード、208 GTをチョイスしました。

1994年式プジョー205 GTIに乗り込むカーグラフィック代表の加藤さん。

まずは加藤さんが205 GTIのステアリングを握ります。ひとしきりそのドライブを楽しんだあと、加藤さんは懐かしそうに語り始めました。「僕が『CAR GRAPHIC』に入ったころ、編集部には“長期テスト車”として1.6ℓの205 GTIがありました。そのときの記憶とこの後期型205 GTIとでは印象がまったく異なるのに驚きました。普段遣いされていて足回りも十分にこなれているからでしょう、本当に乗り心地がいいですね」。加えて“ホットハッチ”と呼ばれたスポーツコンパクトモデルの楽しい記憶も蘇ったようです。

「いまのクルマにはない、独特の軽快感がこの205 GTIにはありますね。翼が生えた感じといえばいいんでしょうか。最近はコンパクトカーといっても重厚で接地感の高さが売りのモデルが多いですが、205 GTIは路面にさらっと接している感じでありつつ、ステアリングやスロットル操作に対する反応がダイレクト。打てば響くやりとりが面白いんです。この点は現代の208にも通じるところはありますが、205 GTIはあの頃の僕たちにとってホットハッチのヒーローだったから、クルマに対する当時の熱量や空気感を思い出させますね」と目を輝かせました。

キビキビとした走りっぷりはもちろん、ダイレクトな操作感は現役時代のままというのが、205 GTIに対する加藤さんの印象。その一方で乗り心地の良さに驚いたそうです。
ステアリング中央のロゴやレザーとファブリックのコンビネーションスポーツシートがGTIの証。新倉さんの1994年式205 GTIには120psの1.9ℓ直4エンジンが搭載されます。新倉さんがこのクルマを手に入れる際、ボディはオリジナルと同じマイアミブルーで全塗装するとともに、エンジンをオーバーホール。さらに購入後は、できるだけオリジナルに近い状態にクルマを戻しているといいます。

受け継がれるプジョー・コンパクトの矜恃

代わって新倉さんが208 GTのドライブに臨みます。車両をひと周りしながら「私は205 GTIを斜め後ろから見たときのデザインが大好きなのですが、208 GTもそっくりで、魅力的ですよね」とすっかりお気に入りの様子。同時にカチッという音ともにロックが自動で解除されました。これは208に初採用となったプロキシミティスマートキーによるもの。そんな便利機能が208には備わります。

最新型208 GTの運転席に収まる新倉さん。独創的なレイアウトの3D i-Cockpitは人の身体にあわせて設計されたこともあってポジションもしっかりと決まり、クルマとの一体感を高めてくれます。
205と同様に車両感覚も掴みやすく、活発に走らせられるのが楽しいというのが新倉さんの208評。その快活さはプジョー・コンパクトモデルの良き伝統です。

スマートな所作でドアを開けて運転席に収まった新倉さんは、運転席周りの独創的なレイアウトに驚きながらもすぐに馴染まれたよう。それは何より208が人間を中心に考えた3D i-Cockpitを採用しているからにほかなりません。小径ステアリングの上奥にインストルメントルパネルを配し、ダッシュボード中央に大型のタッチスクリーンを設置したことで視線の移動量は最小限に済み、3D表示となったメーターパネルは重要な情報が瞬時に読み取れます。また、いっぽうでハザードなどの物理スイッチは205と同じ位置に配置されているため、直感的な操作が可能。そんな205の時代からの扱いやすさを受け継ぎながら、さらなる進化を遂げた208の走りっぷりを試してもらいました。

「足回りはしっかりとしていながらしなやかさもあって乗り心地はいいですし、路面からの情報が手に取るようにわかる感じも205 GTIと一緒ですね。このクルマも私に合っています。実は家族用にドイツ製のコンパクトカーも持っているんですが、乗り心地が硬いんです。その点208は足の動きがしなやかで、猫足とも例えられるプジョーらしさに溢れていますね。205 GTIもそうですが、プジョーのコンパクトカーってエンジンを回して走らせるのが本当にいい。サウンドも楽しめますし、小さな車体をキビキビと操れる一体感も味わえる。性能をフルに引き出して頑張る感じに親近感を覚えます。以前、『CAR GRAPHIC TV』で208を紹介していたときに、キャスターの松任谷正隆さんが“小さいクルマはいいね……。あー、これね、ネコ足ですよ。まあ、なんかプジョーが戻ってきた感じがするぞー”と嬉しそうに話されていたんですが、今日試乗してみて、まさに同じ印象を抱きました。きっと私もテレビの松任谷さんと同じようににこやかな表情で208 GTを運転していたんでしょうね」と笑いながら語ってくれました。そんなプジョーらしさは、連綿と培われてきた実用車作りの巧さが凝縮されたものと言い換えることができます。205も208も基本設計はシンプルながら、特に足回りではサスペンションが持つ性能を存分に発揮できるセッティングが施され、しなやかかつ一体感のある動きをもたらしています。生活をともにするクルマだからこそ知り得た、秘伝のレシピが受け継がれているとも言えるでしょう。その技術の伝承や巧さが、素直な動きで運転する愉しさや気持ちよさを下支えし、使う人に笑顔にしているのです。

205 GTIの斜め後ろからのデザインが新倉さんのお気に入りのポイントということですが、そのプレーンな美しさは最新の208にもしっかりと受け継がれています。

また、この208にはドライバーの負担を軽減しながら、しっかりと安全を確保する最新機能が数多く採用されているのも見逃せません。そのひとつであるアクティブクルーズコントロールは高速道路や自動車専用道路の走行時に前走車に追従して速度やブレーキを自動で調整し、同時にレーンキープアシストが車線内走行をサポート。歩行者や二輪車などの突然の飛び出しを検知してブレーキをかけ、衝突の被害を最小限に留めるアクティブセーフティブレーキなどは街中で有効な予防安全機能です。ドライバー自身のみならず大切な人を守るためのフレンチテックが208には満載されているのです。

「まったくの偶然なんですが、今回の取材の話をいただく直前に妹が2008を見てみたいというので都内のプジョー・ディーラーに行ったんですよ。試乗の際に後席に座っただけでしたが、やっぱりそれも乗り心地がよくて、造りもしっかりしていて、装備も充実。改めて良いクルマだなと思いました。それは妹も同様だったらしく最終的に購入に至りました。彼女がプジョーを好きになったのは私の影響かもしれませんね」と新倉さんは嬉しそうに話しました。

「おふたりには“青い血”が流れているんですよ」という加藤さんの言葉に、「いつもプジョーが一緒でしたからね」と応える新倉さん。「趣味というより生活の一部。家族のような存在」というプジョーと新倉さんの楽しく心地よい生活は、これからもずっと続いていくことでしょう。

text=BLEU
photo=Takayuki Kikuchi