NEW PEUGEOT 308 “常識を、美しく超えていく。”
王道ハッチバックのDNAを受け継ぐ
NEW 308の実力


2007年の初代登場から連綿とプジョーの屋台骨を支えてきた308。その中核モデルは先ごろ“常識を、美しく超えていく。”をテーマに、アグレッシブかつ洗練されたデザインを纏い、先進性溢れる装備の数々を携えたNEW 308として生まれ変わりました。今回は歴代プジョーモデルを乗り継いできたオーナーの方に、その大胆な進化を実際に体感していただきました。

今回、取材にご協力いただいたのは野口哲弥さん。実は野口さんは先のAUTOMOBILE COUNCILのプジョー・ブースでNEW 308とともに展示されたシルバーの306のオーナーなのです。ご自身はモータースポーツにおける活躍ぶりでプジョーのファンになっただけでなく、プジョー30Xシリーズを乗り継いできた愛好家。今回はカーグラフィック代表の加藤哲也さんとともに、モータージャーナリストと30Xシリーズの愛好家から見たNEW 308の魅力を語っていただきました。




「これまで、プジョーは306を2台、他にRCZ(コンセプト登場時の車名は308 RCZ)を愛用してきたのですが、現在も勤務する会社でエンジニアとしてイギリスに駐在していた時代に、308の前身モデルともいうべき307も足にしていたんですよ。その頃のデザインは中性的というか、可愛らしさがあったように思うんですけれど、新型308は本当に格好良いですね。デザインは躍動的で、エンブレムも新しくなって、その横顔のイメージが308にマッチしていると思います。プジョーが新しいステップを踏もうとしているんだなという意気込みみたいなものがエンブレムやスタイリングから感じられますよね」 エクステリアデザインについてそう語ってくださった野口さん。インテリアの印象はどうでしょう。

「ハイテクですよね(笑)。プジョー独自のi-Cockpitは慣れが必要かもしれませんが、未来感を感じますし、何よりクオリティが高くて洗練されているのがいい。飛行機のコクピットのような囲まれ感があって、身近なところでいえばシステムキッチンみたいな清潔感と機能性に溢れていますよね」 “OK、プジョー”の掛け声での音声操作が可能なインフォテイメントシステム“PEUGEOT i-Connect Advanced”(試乗車の308 GT BlueHDiに装備)にも興味津々のようです。いっぽうでは306に通じるところを発見し思わず笑みがこぼれる場面もありました。
「個性的なウィンカーの音とかは変わっていなくて、プジョーらしさを感じますね。あとセンターコンソール中央のトグルスイッチもそう。使用頻度の高いものは使いやすさを考えて機械式のまま残されてある。ここは306から受け継がれている美点と言えるでしょうか」

では、実際にステアリングを握っていただき、横浜近辺の首都高速を中心にドライブしながらその印象を伺います。
「306のMTに初めて乗ったときは『なんだかクセのあるクルマだな』と思って慣れるまではちょっと時間が掛かったんですけど、新しい308は初めて乗ったにも関わらずすごく乗りやすいですね。乗り心地も重厚だし、ボディが大きくなっているのに街中でも扱いやすい。306にも言えることですがステアリングを切ったらイメージどおりに曲がってくれるところがいい。ブレーキもしっかり利いてタッチも自然、ディーゼルのトルクのツキの良さもあって扱いやすいと感心しつつ、様々なシチュエーションで十分なテストを重ねてしっかりとセッティングされているんですね。」と付け加えてくださいました。


続いて加藤さんがNEW 308のステアリングを握ります。聞けば試乗するのは今回が2度目とのこと。最初の試乗からの印象の変化はあったのでしょうか。
「初めて乗ったときは、ちょっとした段差を超えた瞬間に『お、これいいな』って気付くくらいしなやかというか、角が丸められていて上質だなと感じましたが、今回は以前に乗ったときよりもタイヤの硬さを感じなくなっていてさらに良かった。プジョーって一時期はドイツ車的な足の硬さを持つ時代もあったけれど、この308はプジョーらしいひたっと衝撃を和らげる、いわゆる猫足の感じがある。それでいながら大入力に遭遇してもボディが煽られないしっかり感も備わっているよね」 ファーストコンタクトよりも印象がさらによくなったと加藤さんはいいます。

「この1.5ℓディーゼルは非常に静かで音や振動もしっかりと抑えられていていい。確かに先代モデルよりも車重は重くなっているんだけれど、低速域から十分なトルクがあって思ったとおりの加減速ができる。とにかくドライバビリティが高い。直進性のよさは相変わらずだし、どっしりとした安定感の高い乗り心地を獲得しているよね」

加藤さんが続けます。「308のステアリングってフルロックに切った状態から逆方向に目一杯切り戻す、いわゆるロック・トゥ・ロックは3回転で、いまどきのクルマにしてはギアリングが落としてあってスロー。このステアリングホイールはi-Cockpitを実現するために小さく作られているんだけど、ギアリングが高いとクイックに動きすぎてしまうから、それを避けつつ違和感なくドライバーの意思どおりに動くようセッティングしているんだろうなって思うんですよ。さっき野口さんがすごく乗りやすく扱いやすいっておっしゃったけど、まさにそこにつながっているのかなと。たとえば205や306も同じことが言えて、ドライバーエンゲージメントはプジョー独特のものがある。端的にいえばクルマからのフィードバックがしっかりとしている、ということなんです。もちろんスポーツカーのそれとは違いますが、しっかりと路面の情報を伝えてくるから運転がしやすい。そこが野口さんも違和感を覚えなかったところだし、新しい308に対しても『ああ、プジョーだね』って思えるところじゃないでしょうか」 そんな加藤さんの言葉に大きく頷く野口さん。クルマとしっかり対話できるという点は、おふたりに共通する意見のようです。

モータースポーツにおける活躍やチャレンジ精神に共感を覚えてプジョーファンになったいっぽうで、プジョーの合理的かつ真面目なクルマ作りに惹かれていったと語ってくださった野口さん。そんな美点をしっかりと受け継いで作られたNEW 308こそ、次世代の新しいハッチバック像だと加藤さんは論じます。
「やはりプジョーはコンパクトカー作りに長けていますよね。特にハッチバックは5人がちゃんと乗れて、荷物もしっかりと積めて、リアシートを畳めばさらに大容量の荷物も飲み込める。スタイリングもキュートで安全性の面でも実用性も抜群。いままではドイツ車がそのスタンダードとしてセグメントを牽引してきたのかもしれないけれど、成熟したが故に商品としての魅力が薄れてきていた。そこにハッチバックの良さを凝縮した308が出てきたのは何より嬉しいこと。新たなスタンダードが生まれたように感じるよね」

この加藤さんの言葉からもわかるように、NEW 308は運転の楽しさや実用性の高さはもちろん、先進運転支援システムや安全装備を充実させ、それまでの“常識を、美しく超えて”きた、Cセグメントハッチバックの新しいリーダーといえるでしょう。実はこの日、野口さんの奥様も取材に同行されていたのですが、おふたりのやりとりのなかでは、このクルマとなら野口さんの趣味であるロードバイクでの行動範囲も広がりそう、というところまで話が盛り上がっていました。つまりNEW 308はライフスタイルの幅も広げてくれる格好の相棒になり得る存在というわけです。様々なクルマを知るモータージャーナリストの意見はもちろん、長年プジョーと過ごしてきたオーナーの素直な言葉にこそ、NEW 308の真の魅力が宿っているといえるのではないでしょうか。

text=BLEU
photo=Takayuki Kikuchi