LION DNA PEUGEOTコンパクトのDNA
「フレンチテック」の愉しみ方[前編]

長年にわたって人々の生活を支えてきたプジョーのコンパクトモデル。基本設計の確かさを元に、時代やユーザーの要望に応える機能や装備を採用し、常に使いやすさを追求して進化を遂げてきました。たとえば現行208シリーズではアクティブクルーズコントロール&レーンポジショニングアシストを始めとする先進運転支援システム(ADAS)や、人間中心のレイアウトで運転姿勢を再構築したプジョー独自の3D i-Cockpitといった最新技術が多く盛り込まれています。そんな“フレンチテック”を満載した208の源流と言えるのが、名車205シリーズです。様々なプジョー・モデルを乗り継ぎ、現在は205 GTIとの生活を楽しむプジョー・フリークの新倉俊治さんに、自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の代表を務める加藤哲也さんが、205 GTI、そしてプジョーのコンパクトカーの魅力をうかがいました。

205 GTIの前で語り合う新倉さん(左)とカーグラフィック代表の加藤さん。

プジョーとの出会い、プジョー生活の始まり

鮮やかなマイアミブルーの205 GTIから降り立ったのは、愛車にあわせてブルーのセーターをコーディネートした新倉さん。「これまではシルバーやガンメタリックなど、オーソドックスなボディカラーばかり選んでいましたが、一度は憧れのフレンチブルーに乗りたいと思っていたところ、この205 GTIに出会いました」。

新倉さんとプジョーの付き合いは実に長く、1989年、31歳のときに新車で309 GTIを手に入れたところから始まります。生まれも育ちも横浜という新倉さんは、地元の正規ディーラーに展示されていたプジョーに目がとまったのをきっかけに、後日改めて東京都内の本社ショールームに足を運んだそうです。

「『CAR GRAPHIC TV』のキャスターを務められている松任谷正隆さんが当時、309 GTIにお乗りになっていたのですが、セールスの方に『これが松任谷さんが乗っている309 GTIです』といわれて、『はい、じゃあ私も同じのを買います』って。格好よくて、ほぼひと目惚れでした。プジョーの知識はほとんどないに等しく、しかも、左ハンドルのマニュアル車なんて、運転したこともなかったのに、です(笑)。納車の日は雨で、東京のショールームから千葉にある妻の実家に家族を迎えに行ったのですが、ぶつけたらみっともないのでヒヤヒヤしながら帰ってきたのを、いまでもはっきりと覚えています」。

このクルマの購入がきっかけとなり、『CAR GRAPHIC TV』を始め、自動車専門誌『CAR GRAPHIC』や『NAVI』などから刺激を受けてプジョーの魅力にはまり込んでいった新倉さん。その後も106 RALLYE、406 SV、309 GTI(2台目)、205 GTI、106 RALLYE(2台目)を乗り継ぎながら、家族用に205 XSや306 Styleを同時所有するなど、他ブランドに浮気することなくプジョー・ライフを満喫されてきました。そして2018年、念願のブルーの205 GTIを入手することになったのです。

30年以上プジョーと暮らす新倉さんが乗り継いできたクルマたちの写真。

205 GTIとの過ごし方

建築設備会社を営む新倉さん、当時は休む間もなく働きづめの日々が続いたといいます。そんな彼にとって、たまに得られた休日でのプジョーとのドライブは何より大切なひとときとなったそうです。
「第三京浜を往復するのが、いい気晴らしになりました。何も考えずに運転だけが楽しめる時間は、当時の自分にはかけがえのないものでした。ただ、一方では大切な家族と一緒に気持ちよく走りたいという思いも強くなっていきました。そんな理由から、もう一度205 GTIに乗ろうと決意したのです」

309 GTIと同様、ピニンファリーナによるデザインを纏う205 GTIの格好よさに改めて惹かれていた新倉さん。Cピラーの造形を始め、現代の208にも通じるプレーンかつ普遍的な魅力が205 GTIには凝縮されています。「コンパクトなボディサイズは街中での取り回しが良く運転がしやすく、気を遣わずに乗れるのがいいですね。私にはこのサイズが肌に合うんです。あと、乗り心地の良いところや、大きなスライドガラスサンルーフのおかげで明るく、開放感があるところも好きですね」。そのきびきびとした軽快なフットワークは205 GTIのファン・トゥ・ドライブの源。しなやかな乗り心地はプジョーを乗り継いできた新倉さんだからこそわかる、歴代モデルに通じる美点といえるでしょう。

機敏な走りと快適性を備えている205 GTIと過ごす時間はかけがえのないものと新倉さんは話します。

現在、新倉さんが所有する205 GTIは1994年式の後期型。120psの1.9ℓ直列4気筒エンジンは十分なトルク感があり、205 GTI独特の機敏な走りも味わえるうえに、高速の巡航走行でもまったくストレスを感じないそう。そんな運転のしやすさはまさにプジョー・コンパクトモデルの真骨頂といえるでしょう。シンプルかつ機能的なコクピット周りのレイアウトは扱いやすく、ホールド性が高く掛け心地のいいシートも新倉さんと205 GTIの一体感を高めてくれる要素のひとつです。その精神は後継車である208にもしっかりと受け継がれており、パワーユニットが選べる“POWER OF CHOICE”や人の体に合わせる“i-Cockpit”が、使う人を第一に考えるプジョーならではのソリューションとして採用されているのです。

肥大化した現代車のなかでは、そのコンパクトなサイズが際立つ205 GTI。ボディの軽さも相まってのキビキビとした軽快なフットワークは、街ゆく人の目を引きます。

「205は30年以上前に設計されたクルマですが、日頃のメンテナンスだけでも日々の足として十分に使えます。パーツの供給もあるので安心できますね。高級車はお金を出せば買えますが、こういった少し古いクルマは、わかる人が見たら、その価値がわかる。好きで乗っているんだと思ってもらえる。それがこのクルマに乗る誇りです」。
基本がしっかりと作り込まれたタフな実用車だからこそ、臆せずに日常遣いできるのでしょう。もちろんそこに至ったのは309 GTIを所有されていた時代から続く人との縁やメディアの後押し、そして新倉さん自身がプジョーに寄せる信頼感や誇りを大切にされているからこそだといえるでしょう。
「運転ができるかぎり乗り続けたいですね」という205 GTIは、新倉さんの良き相棒として、美しいマイアミブルーのボディカラーのようにこれからの生活も色鮮やかに彩ってくれるはずです。

後編では、カーグラフィック代表の加藤哲也さんが205GTIを試乗、新倉さんは205の精神を受け継ぎつつ、最新の先進運転支援システムなどを搭載して運転する愉しさを新たなステージに引き上げた208をドライブし、それぞれの魅力やこの2台に流れるプジョー・コンパクトモデルのDNAを、モータリングジャーナリストとユーザーの視点から紹介します。

text=BLEU
photo=Takayuki Kikuchi